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宗教ミステリの傑作!あなたの空間が破れさる 映画感想「薔薇の名前」

原作のすごさ

薔薇の名前という作品をご存じでしょうか?

 

原作は、宗教ミステリの傑作と呼ばれています。宗教ミステリの書き手京極夏彦の「鉄鼠の檻」の解説を読んでいて、「薔薇の名前」という小説の存在を私は初めて知りました。今回やっと、その映画を見れました。

 

著者を見てみましょう。

ウンベルト・エーコUmberto Eco, 1932年1月5日 - 2016年2月19日)は、イタリア小説家エッセイスト文芸評論家哲学者記号学者。イタリア共和国功労勲章受章者。1980年に発表された画期的歴史小説『薔薇の名前(lI nome della rosa)』の著者として最もよく知られる。同作品はフィクションの記号論的分析、聖書分析、中世研究、文学理論の要素を盛り込んだ知的ミステリーである。

ウンベルト・エーコ - Wikipedia

 

哲学者でもあり、記号学者。そして、記号論的分析!!??これらとどうミステリーが融合していくのか。こういう知性が詰まった文学作品というものはゾクゾクしますよね。ますます原作を読んでみたくなります。キリスト教に詳しいといいのかも。

 

原作の紹介については以下のサイトが参考になります。松岡正剛の解釈がやはりすごい。難しそうです。

241夜『薔薇の名前』ウンベルト・エーコ|松岡正剛の千夜千冊

 

こちらもおすすめ。

honcierge.jp

 

 それでは、映画の感想です。

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 おおまかなネタバレあらすじはこちらを。任意で。

 

 

 

 

 

感想


・規律
・信仰
・異端審問
・性愛

テーマはこんなものだろうか。



・雰囲気、キャストがいい

ショーン・コネリーの渋かっこよさ、若き日のクリスチャン・スレーターの純朴さ。

それにくわえ、雰囲気、絵作りがとても重厚。中世という時代の演出が伝わる。静かで淡々と進むからこそ、ストーリーに集中できた。

ショーンコネリー演じる彼が、キリスト教の歴史で重要な図書を発見し大喜びしている姿が、私には印象的だった。知を求める男の狂喜が良かった。薔薇の名前というタイトルの意味も沁みてくる。ある男の個人的な思いが、強く後に残る。

 


・変さ

見ていて、変わった人間が多かった。ただでさえ、修道会というわたしたち現代日本人には、まったく馴染みのない空間である。それなのに、どんどん変な登場人物たちが登場する。

空間も人も異常だ、と私は感じた。外側を徹底的に排斥するという規律、そして、それに付き従う人間たちの振る舞いには、やはりどこか怖さを感じた。

ここで外側の存在なのは、映画内の非信仰者である貧しい者たち、そして見ている私自身だ。どうして変だ、異常だと感じてしまうのだろうか。

「常識」による「正常」が、無意識に刷り込まれているからか。その無意識性から人は逃れられない。異常も正常も実態はなく、単なる “概念” であるずなのに。

 

 

 


・信仰という空間

常識という空間にとらわれている私たちと、信仰という空間にとらわれている修道士たち。違いはあるのかほとんど差はないと思う。

何を信じているのかという違いはあるが、それは本質ではない。

だから、信仰に良い悪いという価値観を押し付けてはいけない。たとえば、カルト宗教へのイメージは悪いが、認められている宗教とカルトの間には本質的な差はない。歴史があるかないかの差に過ぎない。

外から見れば異常なほどの「思い込み」という軸は、共通のものだろう。

「誰かの常識は、誰かの非常識」という言葉もある。

違いがあるように見えるのだとすれば、微妙なバランスの違いなのだろう。意志や自由をどうとらえるのか。なんにせよ、白黒はっきりとはしない。これら人々の微妙なバランスの表現が、この映画からは感じ取れた。

宗教空間の本質は、やはり人の思いだ。それならば、思いが違えば亀裂が生じる。壊すのもまた、人の思いというわけだ。この物語では、そうして空間が壊れ、悲劇に繋がる。白黒つかないものに、無理やり境界を作ろうとした結果の悲劇に見える。


 

 

 

 

 

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